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上京の三日間おまけ、パイプのお話(下)

2010.06.13 Sun
 「昔会社の友人で、決めて三千円以上の値段をパイプには手を出さない人がいます。彼はカーボン(喫煙して行くうちに火皿の内壁に積蓄する炭層のようなもの、タバコの味をまろやかにすると言われる)の手入れはまったくせずに、それが厚くなり過ぎでパイプの本体を割れてしまうまで、喫煙し続けました。そんな彼が、割れる直前のタバコが一番美味いと言ってましたね。」

 微笑みながら、この思い出話を語ってくれたのは、いま七十代の日本代表的なパイプ作家の一人、有田静生さんです。

 四十代でパイプ制作に専念しプロ転向した有田氏のパイプは、道具としてのクオリティに定評があって、その上独特だが親しみを持った見た目の美しさを感じさせます。決して手頃な値段とは言えませんが、あらゆる面において、パイプスモーカーにとって長年愛用するのにオンパイプに成り得る、値段以上の価値のあるものだと考えています。

 初対面でしたが、私は自分のことを「大学で手伝っている」と言っただけで、「ってことは、大学院生ですね?」と、言われました。些細なことですが、語り口調や雰囲気で、一瞬で私の正体(笑)を判別したことで、その観察力の鋭さに、その場でひそかに驚きました。

 お会いした喫煙専門店の中で、私のほかに、店主とパイプコレクターの方々がいました。よって会話の内容がパイプ制作のことが中心になってしまう。パイプを制作する側ではなく、あくまで一介のスモーカーでいる私なので、少々心細く思うのでありました。

 そんな中、自分は職人ではなく、趣味の気持ちでパイプ制作に臨んでいると、語る有田さんだが、プロのパイプ作家として活動していることで、事実上職人の部分はまったくないとも言えないのではないかと、私個人的に思うのであります。

 普段は売店や、客にパイプの形のリクエストを応じることが少ないと言われる有田さんを、不親切に思う人もいるかもしれません。だが実際お会いすると、一人のパイプ作家としての矜持を感じながらも、排他的な印象はなかった。

 そしてタバコが美味しく、飽きのない素晴らしい「有田パイプ」の数々を生み出していることから、断じて「不親切」な作家ではないと、思っています。



 ――パイプいろいろ、人間もいろいろ。パイプ喫煙の難しさから、パイプスモーカーのなかで自ら自分が特別な人種だと、一風変わった考えを持つ人間もいます。思想の自由上、それはそれでよろしいことだと思いますが、稀に見る「パイプスモーカー以外立ち入り禁止」という看板を立てた、バーを備えるパイプの専門店の構えに、私は理解し苦しむのであります。

 一度、いま住む町にある喫煙具専門店から、追い出されたことがあります。

 いや、別に私がなにかマズイことをしたわけではなく、ただ店のパイプコーナーに近づいたら、店主らしき人から「この時間帯は予約がないと対応できませんのでっ」と、かなりの早口で店から追い出されたのであります。

 同店に数回訪ねたことがあるものの、あの店主らしき者と出くわしたのは、それが初めてである。

 数回訪ねたのは、店内展示しているパイプの一本に、「恋」していたからです。末永く愛用するパイプを購入するまでに、私は長くて数カ月もの時間をかけて「デート」の儀式をすることにしており、それが出かけるさいの楽しみでもありました。

 ひとまず店を出ることにしました。脳内で記憶を反芻して行くうちに、やはりおだやかに思える経験ではなかったので、翌日電話でその対応の訳を尋ねることにしたのであります。これがいけなかった。

 どうやら同店の私が訪ねた時間帯は、客対応しないことに決めており、それが遠方の方のためにとっておいた時間帯だと、説明されたわけですが、説明の口調は、会った時と同じくかなりの早口で、敬語は使っているが、その勢いは洪水の如き、敵意すら感じるものであった。元々短気な私が「もう二度と訪ねることはないだろう」の一言に、「ルールを守らないお客さんは来なくて結構です」とのご対応。

 私があの一本のパイプに対しての恋愛感情がたちまち憎悪に変わり、あえなく「失恋」したのであります。パイプに罪はない、親(?)がいけなかったのであります。

 ともあれ、その「店に入っちゃいけない」時間帯について、同店の店内に告知や貼り紙がなければ、運営しているホームページにも説明が一切書かれていない。やはり「選ばれし者」しか、相手にしない店であります。



 パイプいろいろ、人間もいろいろ…今日もパイプを燻しながら、有田さんを紹介したしていただいた喫煙具専門店に感謝しつつ、記憶を新たにするのでありました。



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