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『セデック・バレ』「太陽と虹の橋」

2011.09.28 Wed
「――我々の魂が行く先に虹の橋がある、その入り口には先祖様の霊が待っている。男はより多くの敵を殺めその首を狩り、両手は血まみれで顔には勇士の印が刻まれる。そうすれば先祖様は「セデックバレ」(栄光ある戦士)として認めてくださり、橋を渡ることをお許しになるのだよ。」


 彼らは、其々の猟り場(縄張り)を守るべく、族と族の間はしばしば衝突が起き、殺し合う。より多くの敵のを殺め、より多くの首を狩ることが勇者の印とされる。そして彼らは漢民族よりはるか昔、台湾と呼ばれる島の山で暮らしてきた先住民、台湾では原住民と呼ばれる人たちである…


 『海角七號』を制作した魏徳聖監督の2011年最新作『セデック・バレ』は、そんな彼ら、そして多くの人々が命を落とした「霧社事件」を描いた映画作品です。

 歴史的惨劇とも言えるこの事件を映画化するだけに、この作品は制作される時点から様々な波紋をよんでいます。 魏徳聖監督は12年前からこの作品の草案を立てたと言われ、2003年に彼が制作費用を集めるために自腹で長さ5分のパイロット映像まで作った。それでも結局集金に失敗し、制作に踏み出せませんでした。しかしのち『海角七號』の大ヒットが『セデック・バレ』の資金集めに繋がって、いよいよ同作の制作が始まります。しかしながら、膨大な資金を集めるにはそう簡単なことではありませんでした。制作の途中でも監督はしばしば資金に苦心し、映画の制作過程中資金難は常にあったという。

 作品の規模と言えば、台湾のウィキペディアによると制作には日本と韓国のスタッフ合わせておよそ400人が参加し、また全体の制作スタッフとエキストラを合わせて約1万人も超え、制作費7億台湾ドル(約21億円)もかかった、台湾映画史上これまでにない大作になったわけです。

 さて、本編を見るまでには、やはり気持ちは複雑なものでした。前述のように、「霧社事件」は悲惨な歴史事件だけあって、それをモチーフにすることに大変勇気のあることだと思うが、一観客としても単一の視点でこの事件を解釈してほしくはありません。しかし映画を観た瞬間、(少なくとも私の中では)その不安が消えうせたのであります。

 自分がこの作品で見たものはまず気高く生きる原住民達、彼ら族と族の間数世代渡る猟場の争い、または先祖の誇りをかけた戦いと殺し合い、やって来る日本人達そして文明と出会い、そこから彼らが「セデック」は「セデック」ではなくなっていく悲しみを生み出す…さては彼らは一族の生き残りを選ぶか、先祖が教えた誇りを選ぶか…さらに登場する日本人のなかには霧社で十数年暮らしセデックを娶った霧社警察主任佐塚愛佑(キム兄こと木村佑一)、セデック族の良き理解者の巡査小島源治(安藤政信)、セデック討伐を担当する将軍鎌田彌彥(河原さぶ)など、抗日あるいは反日のメッセージをこめた映画というより、私には文化と文化の衝突を描いた作品に見えました。

 族長が日本巡査になった族人に「お前が死んだら虹の橋に行くのか、それとも日本の神社に行くのか」と問いかけた。霧社の日本人がひとりひとり殺されてゆくなか、日本人女性が一緒に避難するセデック族の女性に「あんた蕃人でしょう?なんてあたしたちと一緒にいるの?」と言い、最後にセデック族の女性が自分の父親に「なんでこんなことするの!」と叫んだ。またセデック族の子供たちが自分の日本人のクラスメイトに「永遠の友たちになろう」を言って、殺してしまう…

 漢民族から生まれ、のち日本で12年間暮らした私が、『セデック・バレ』の上映が終わるまでずっと涙を堪えていた。

 台湾と日本の関係は「親日」あるいは「反日」の一言では語りきれない複雑なものであり、原住民は台湾の一部であり、彼らのアイデンティティーもまた台湾の複雑な政治関係と国際地位と深く関わっています。魏徳聖監督はそれをよく理解し、この作品をライフウォークとして12年前制作を決意したに違いない。

 映画館で配布される無料パンフレットの『セデック・バレ』の映画紹介冒頭はこう書かれている…

「虹の橋の一族の地に、太陽の一族がやって来た。彼らは虹と太陽は一つの空にあることを忘れていた…」

 日本のメディアが『セデックバレ』を「抗日映画」あるいは「反日映画」として紹介し、「海外では残酷シーンが多すぎで民族主義の過剰などで酷評されている」と大いに語っているようですが、台湾と深く関わっている日本の人々には是非とも見てほしい作品だと考えます。日本で無事公開されることを望みたいと思います。しかしながら『セデックバレ』という作品を主観的でない読み取り方ができる観客は、日本人のみならず、世界中は果たしてどのくらいいるのだろうか。


『セデック・バレ』日本公式サイト

『セデック・バレ』メイキング映像(映画美術監督担当種田陽平氏らが語る)

【ニュースの読み方】台湾映画「セデック・バレ」とは何か(ユーチューブ)



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Category:キッチュな映画 | Comment(10) | Trackback(0) | top↑ |
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| | | 2011.10.06(Thu) 23:04:24 | [EDIT] | top↑ |

Re: fight

書き込みいただきありがとうございます。

自分は複雑な思いで映画館に入りましたが、あらゆる面でいい映画だったと思います。

お恥ずかしながら台湾の若い世代でも「霧社事件」ところか、原住民たちの思いに理解がある人がそれほど多くはないように思えます。
しかしながらこのような作品が制作&上映されること自体意味があると思います。

作中原住民のリーダーをヒーローに見えたり、日本人がリアルに惨殺されるシーンが多かったりすることも、映画の難しいところかもしれません…でも見る人にさまざまなとらえ方と意見があることも、素晴しい事だと思います。

と思いつつ、台湾では総統選が近いおかげでそれほど多くはありませんが、一部同作をプロパガンダ的に利用する人間もいないことはありません。『セデックバレ』はそういう宿命背負う映画作品かもしれません。

もしも日本での公開が実現されたら、是非とも欧米の映画祭で公開された短いバージョンではなく、前編後編に分かれた完全版を上映してほしいと思います。
- | くれたかし(管理人) | URL | 2011.10.06(Thu) 23:41:20 | [EDIT] | top↑ |

no subject

こんにちは。台湾に住んで4年目の日本人です。セデックバレ関連の記事を検索していて、偶然このページを拝見しました。
敏感な題材なので、公開前には心配もありましたが、やはり、そこはさすが魏監督の作品だけあって、単なる反日映画ではなく、文明論にまで踏み込んだ深い内容になっていると感じました。
又、ネット上で観客の感想や批評を見ても、監督の意図を理解した上での冷静で客観的な意見が多い事に大変好感が持てましたし、このように多種多様な意見が出るところこそ、大陸とは異なり、成熟した民主社会・台湾の最も素晴らしい点だと思います。
ただし、仰るように、この映画の日本公開には細心の注意が必要かもしれません。
ちゃんと観た人にはこの映画のテーマや、「仇日映画を撮るつもりはない」という魏監督の意図が伝わると思いますが、霧社での日本人虐殺シーンや戦闘シーンだけが、ネットや報道などで一人歩きすると、台湾人に対する無用な誤解と偏見を招きかねず、台湾の歴史について深い知識を持たない一般日本人の、台湾に対する友好的な心情を一変させる危険性があると思います。
 だから、日本公開前には必ず、魏監督が出来るだけ多くの日本のメディアに出て、製作意図を説明する事、それから魏監督から日本の観衆に向けてのメッセージが記載されたパンフレットを映画館で必ず配布する事、こういう細かい配慮が必要です。

個人的には、上の様な配慮をしつつ、ぜひ日本で公開すべきだと考えます。
- | SHU | URL | 2011.10.20(Thu) 18:56:13 | [EDIT] | top↑ |

Re: no subject

どうもこんにちは、コメント頂きありがとうございます。

そして返信遅れて申し訳ありません――

今回映画の影響で、映画のメイキングの他に、映画の登場人物の事件生還者の証言との比較など、
霧社事件関連の出版物がいくつが出版し、注目されました。

事件の生還者のなかでも、立場と経験によってまったく異なる証言をされる方もいますし、
切っ掛けは映画でも、様々な視点で歴史を振り返ってみるのも、良い事ではないかと考えます。

しかし映画そのものをどうとらえるのかは観客の判断で、制作する側にとっても責任重いことでしょう。

そこは彼らに敬意を表しながら、日本のみならず、もっといろんな国で、
そして仰られるように周到な形での公開の実現を心より祈りたいと思います。
- | くれたかし(管理人) | URL | 2011.10.31(Mon) 14:12:16 | [EDIT] | top↑ |

やっと全部観れました

相揚さんの日本語訳3冊他を読んだ者としては、描写された内容は史実を忠実に再現されたものとして良かったと思います。「民族が他の民族を支配する」不条理を余すことなく伝えています。日本が去った後も台湾人は中国人に弾圧(228、白色テロ)され続けたことは良く知られていることです。平和な今の台湾人に「台湾人に生まれた悲哀」を学ぶきっかけになればと思います。そして、日本人は自らの光と影の歴史を正視して、卑屈になることなく台湾の人々と連帯する道を歩むときが来ていると痛感しています。
- | 近藤 | URL | 2011.11.02(Wed) 00:40:40 | [EDIT] | top↑ |

Re: やっと全部観れました

返信遅れて申し訳ありません。

 『セデックバレ』はやはり映画として、映画以上の意味を持つ作品かもしれません。

 大環境が如何に変化しようか、人は生きなければなれません、それこそ花岡が自決するシーンが痛々しく見え、彼等が語る「矛盾なはらわた」が何時までも記憶に留まる原因なのかもしれません。

 少しネガティブかもしれませんが、こはこの映画作品の素晴しいところでありながら、危険なところでもあるように思います…と同時にいろんな人から様々な思いを引き出してしまう『セデックバレ』は歴史に残る作品であることは間違いないと思います。
- | くれたかし(管理人) | URL | 2011.11.23(Wed) 16:39:26 | [EDIT] | top↑ |

no subject

私は日本人ですがマレーシア華人の夫と暮らしています。
台湾は日本にとって近くて遠い国です。もっと理解を深めるためにこの映画は”道”になると思いました。全体に流れる詩歌がとても素晴らしかった、感動しました。
HkRIpaaw | CHOO | URL | 2012.03.15(Thu) 09:50:57 | [EDIT] | top↑ |

Re: no subject

書き込みいただきありがとうございます。

いつかカット版ではなく、
フルバージョンで日本公開出来ればと思います。
- | くれたかし(管理人) | URL | 2012.03.15(Thu) 22:49:13 | [EDIT] | top↑ |

no subject

昨日、公開最終日に見て参りました。
私は中国語も解らない日本人ですが、映像から読み取れる情報でも十分な映画でした。出来れば、日本で
の字幕か吹替えの作品を再度、見てみたいと思います。
- | | URL | 2012.03.19(Mon) 13:47:02 | [EDIT] | top↑ |

Re: no subject

いつか、小規模でもいいので、日本での上映をぜひ実現してほしいですね…!!
- | くれたかし(管理人) | URL | 2012.03.27(Tue) 02:59:22 | [EDIT] | top↑ |

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